迷走オヤジの独り言

迷走中のおっさんの独り言です

悲しみの四十語

☆書籍名:悲しみの四十語 オススメ☆彡
☆著 者:ジャイルズ・ブラント
☆出版社:早川書房

 

☆感 想

カナダ発のドラマが日本で放送される、ということがほとんどないなか、CSでこれを原作としたドラマが放送されるとのこと。

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ドラマの評価も非常に高く、内容も面白そうなので原作を読んでみることに。

まず、本が手に入らない。これが非常に致命的。2002年に発行されたあと、増版されているのかは不明だが、どこの書店にもない。おそらく出版されはしたが、売れないので初版のみ、というところだろうか。いつも頼みのhontoですら、関西はおろか全国的にも取り扱いなし

最終手段としてAmazonマーケットプレイスにお頼み。いくつか出品されてるなかで状態がいいものを選び、本体1円+送料290円で購入。かなり程度のいいものが4日後に到着。

 

まず、英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞受賞、という触れ込み通り、最近読んだ中では一押しの作品。傑作

 

無骨な刑事カーディナルとその相棒デロームの少し込み入った関係からの、連続殺人犯とのせめぎあいは非常にスリリングであるし、一歩近づいては少し戻り、2歩踏み込んでさらに1歩踏み込む、というような捜査展開に非常に手に汗を握る。カーディナルのパートと殺人犯とのパートが交互に描かれ、平行線がだんだんと1本の線になっていく。非常に面白い。

 

また、カーディナルの過去の過ち、カーディナルの家族問題が本筋の両翼にあり、これらの話が非常にうまく描かれているため、カーディナルに対して感情移入がこれほどまでにできるのか、というくらい物語に寄り添っている。

カーディナルの感情の動き、葛藤が家族問題を軸に揺れ動き、そこに妻への献身的な愛情が描かれ、また、娘への想いも深く描かれており、これがちょいと陳腐な家族愛、というレベルをこえたものであるから、カーディナルという男に対して高倉健ばりの男の生きざま、というものを感じてしまう。

 

殺人犯のパートにおいては、非常にグロテスクな描写もあり、生々しさ、えげつないほどのサイコパスが描かれるため、狂気の「悪」というものを見ることができる。しかしながら、殺人犯当人にとっては、この狂気の「悪」というものが彼自身にとっての日常であるため、いたって普通な感覚であるような描写もあり、こういった「人間を超えた悪」に狙われる恐怖、というものを味わうことができる。

 

全568ページという長編でありながら、久しぶりに充実感のある読書ができ、非常に満足な作品。続編もいくつかでているようではあるのだが、翻訳され出版されたのはこの「悲しみの四十語」だけなので、やっぱり売れなかったのかな、と残念。しかしながら、これだけの名作が埋もれているのはもったいない気がするので、CSでのドラマ化を機に続編も翻訳出版してくれないかな、と少しだけ期待する。

3月中旬から第3作目を原作にドラマが放送されるので、カーディナルの活躍をもう少し見たいと切に希望する。

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