迷走オヤジの独り言

迷走中のおっさんの独り言です

七つの会議(小説版)

☆書籍名:七つの会議
☆著 者:池井戸 潤
☆出版社:集英社文庫

☆感 想

映画の予告編で、野村萬斎の狂気じみた笑顔に惹かれて読んでみることに。

まず、非常に読みやすい。下町ロケットのドラマ化で原作が売れた、という話をよく聞いたが、本を読まない人が原作を買って最後まで読んだ、という話も耳にしていたので、著者のわかりやすい文体に非常に好感を持てた。

日本経済新聞の電子版では、全7話の構成で「7つ」の会議だったのを、書籍化の段階で「+1話」で「8つ」の会議に。電子版を読んでいないので、どこに加筆修正が行われているかがわからないが、第7話で終わって後日談は読者のご想像に、よりは第8話によってきっちり終わらせたので、読後感の良さや八角、坂戸の思いが非常にくみ取れるように。

第1話からすこしづつきな臭い雰囲気を漂わせながら、一つの事件の姿がみえてゆき、最後にはそれがまとまって結末が見えてくる、という展開は非常に面白く、事件の隠ぺいに固執する側とそれを白日にさらす側との攻防はスリリングでさえある。

しかし現実を考えると、コンプライアンスを遵守して内部告発をして生き残った社員など見たことがない。八角が現実にこのような行動にでたなら、はたしてサラリーマンとして生き残れたかどうか。空飛ぶタイヤでもあったように、内部告発、というものが人生をかけるものか躊躇してしまうのは、人生との天秤の傾きだろうかと。

実際、社内で事件が起きたならば加害者も被害者も「そして誰もいなくなった」状態にもちこんで事件が「なかったこと」にされるのを、幾度となく目にしてきた自分にとっては、内部告発なんてうまくいくわけがない、としか思えないのは、未だ村社会的な排他主義が根強く残っているからだろうか。

 

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