JOKER ジョーカー
主演 ホアキン・フェニックス
公開年 2019年
監督 トッド・フィリップス
おススメ ★★★★★
あらすじ
孤独で心の優しいアーサー(ホアキン・フェニックス)は、母の「どんなときも笑顔で人々を楽しませなさい」という言葉を心に刻みコメディアンを目指す。ピエロのメイクをして大道芸を披露しながら母を助ける彼は、同じアパートの住人ソフィーにひそかに思いを寄せていた。そして、笑いのある人生は素晴らしいと信じ、底辺からの脱出を試みる。
感想
これはバットマンのジョーカー誕生の話であって、バットマンのジョーカー誕生の話ではない。世界観こそはバットマンではあるものの、ジョーカーがジョーカーたらしめんところの誕生の物語だといえる。
…と自分でも何を書いているのかわからないくらい、ジョーカーが誕生する物語を目の当たりにした感動、恐ろしさに震えている自分がいました。
生活貧困者、である主人公が本当の底辺すれすれの手前、自我を保ちつつなんとかその日を清貧に生き続けられている日々。それが少しづつ、本当に少しづつ崩れてゆき、破滅と崩壊の道にそっと成功者たちが背中を押す。
何が正しい生き方なのか、どこで救いの手を伸ばせばよかったのか。だれがその手を差し伸べるべきだったのか。そしてすべてはそこにはなく、ただ絶望にあるのみ。いくつもの生まれ持った障壁が、一息にアーサーの人生を飲み込んだ時にジョーカーがうまれる。
町の階段上にジョーカーがあらわれ、タップダンスを踏む姿に、全身鳥肌。もう史上最高の狂気とジョーカー生誕のシーンに、体の芯から恐怖を感じて鳥肌立ちまくり。自分の頭の中では「今日はこのシーンを観るためにここに来た」という歓喜の渦に加えての恐怖。もうなにがなんだか。最高。
で、ジョーカーが自分の意志で行ったことが、世間ではジョーカーの意図すべく所を超えて動き出し、悪の中の王として祭り上げられていく。そこの感覚のずれも見ていて今どきというか、現代社会の狂気を感じて鳥肌。
これだけの作品をよく作り上げたな、と思う反面、これはやっぱりバットマンのジョーカーの話ではなくて、ジョーカーという悪の話なんだと。そりゃブルース様も出てくるし、射殺の話もでてくるので絡みはあるけれど、バットマンなんかいらない。これは、ジョーカーの話であって、ジョーカーという一人の英雄譚なのだと思う。
ただしかし。悪の中の悪、心から震える悪を感じるとするならば、やっぱり「ダークナイト」のジョーカーが史上最狂、最悪のジョーカーなのは間違いない。これだけはゆずれない。
しかし、ジョーカーという悪の英雄誕生を観るならば、この作品をみて心から震えることをお勧めしたい。