☆書籍名:検察側の罪人(上・下)
☆著 者:雫井脩介
☆出版社:文春文庫
☆感 想
映画を見る前に原作を読んでおこうと購入。
『犯人に告ぐ』を読んで以降、著者の作品は読んでいなかったのだが、上下巻という660頁もの長編を一気読みさせる筆力は素晴らしいと思う。20日間の攻防を中だるみすることなくテンポよく読むことができ、非常に次、次、と読み進めていくことができた。
しかしながら、沖野検事の検事を10年近く勤めていて組織に染まり切れていない青臭さとか少しひっかかったり、最上検事のそこまで頭が切れる男のはずなのに、行き当たりばったりというか捜査関係者なら必ず気づくであろう点を見落としていたり、そこどうなん?と思うところが散見されて、最後までひっかかった。
人間、おいつめられると普通ならわかることも思いつかない、想像できないという心理状態になってしまうんだろうな、ということはよくわかる。その部分をあえて書いたのなら、完全な人間はいない、ということと、いきあたりばったりはダメよ、ということなのだろうか。
正義がどうとか、己の信念がどうとか、というのは読み手の世界観との比べあいになるので、難しいところではあるが、最後まで不条理を突き通していたので、実際の社会もそんなもんだろう。それが、最後によく描かれている。
それでも、世の中不条理なことだらけですから。
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