城崎へかえる
作品:城崎へかえる おススメ☆彡
著者:湊かなえ
出版社:本と温泉
ぶらりと城崎温泉を旅する途中に出会った本。
城崎温泉でしか買えない本、ということで、どんなものか興味がわき手にとった。
価格は1200円。この値段が高いのか安いのか、という不躾な疑問に答えるならば、1話しか収録されていないこの内容では高いのだろう。地域限定でしか買えない、というプレミア感がのればこの価格でもいいのだろうが、長編小説の文庫本2冊の価格は高いと感じるのか。
内容は、限定本、というところで伏せておくとして、この本をどのように扱ったのか、というところを話したい。
頁数としては、風呂上がりの食事前までの間、とか、七湯巡りの間の休憩時、くらいで読めてしまう内容である。短い。実際このような感じで読み切ってしまった。特になんともなく旅行記だな、という感じで。
それでは、この本は城崎土産として誰かに渡すものだろうか。それも違うと思う。そうしてしまうと、ただの限定本のプレゼント、にしかなりえないのだろう。
この本を読むためには、いくつかの条件があると思う。
ひとつは、必ず城崎温泉へ旅行すること。
ひとつは、七湯巡りで一の湯に入ること。
ひとつは、旅を終えてこの本を読むこと。
旅館で読んだときは、ふーん、という感じでしか読まなかったが、帰宅後に読んだ時には、その感覚が違ったものであった。
自分の記憶をもとに映像化され、主人公の想いなどがめぐりめぐる。多少の美化やカニのうまさの誇張なども含め、ノスタルジックな城崎への想いが目に浮かぶ。
この、自分の体験と重ねることで、短いながらも作品の深みが増す、ということも含めて、湊かなえとNPO本と温泉が想定したものが、織り込まれているのだろう。
城崎を経験しなければ、この本を経験することは半減してしまうと感じた。オークションなどで手に入れてしまうのは、この本を経験するにあたり非常にもったいない。行けば売っているのだから。読むために行こうと計画するのもありかもしれない。
本は、読んだ年代と時期と場所によって感じ方が変化する、と中学の国語の先生が言っていた。まさしくこの本は、城崎を経験する前と後で感想が変わる、というものだろう。
もう1冊のタオル本については、また機会があれば。